第8話 コラボのお誘い(別視点)
○東條(兎耳山)視点
西園寺君がデビューして3日、彼ほどの才能があれば問題ないと特に心配はしてなかったが順調にいっているようで何よりだ。
デビューのタイミングが半年周期でなかったのと、誰かと一緒にデビューさせてしまうともう一人が霞んでしまう可能性があったのでソロデビューとなってしまった。
たぶん本人はあんまり気にしてないだろうが、こちらの都合でもあるので私からコラボに誘って今後色んな人とコラボできるようにしてあげたい。
私は箱内箱外問わずゲストを呼んで一時間ぐらい雑談をする対談企画を持っているのでコラボに誘っても何もおかしくないはず。
既にウチの箱のメンバーは全員呼んだことがあるので西園寺君も呼ぼう。
そう思って西園寺君にDMする。
「よかったら私の対談企画にコラボとして参加しない?」
すぐに西園寺君から返事がくる。
『いいのかい?東條さんが対談企画をしてることは知ってたから呼ばれるのを楽しみに待ってたよ。こっちはいつでも大丈夫だからそっちのいいタイミングに会わせるよ。』
流石西園寺君。この業界は時間にルーズな人が多いので返事が返ってくるまで3日かかってりするのもざらだったりするが、西園寺君はしっかりしている。
「じゃあ今日の夜にする?流石に急すぎるかな?」
『こっちは全然構わないよ。そんなに事前準備することがあるわけでもないし。』
「それじゃあ今夜でよろしく!一応事前に『あめちゃん』から読む予定のお便りは共有しておくから目を通しておいてね。」
『わかったよ。流石社長業やってるだけあってしっかりしてるね東條さんは。』
「そんなこともないけどね。まあ、Vtuber業界の中ではしっかりしてるかもしれないけど。」
『まだ、そこまでこの業界に詳しいわけじゃないからそういったことの説明とかもして貰えると助かるよ。』
「任せておいて!それなりに業界長いから詳しいと思うよ!」
『ありがとう。よろしく頼むね。』
西園寺君からはそう返ってくる。
ついでにあのことについても聞いておこう。
「西園寺君、今の活動楽しい?」
『楽しいよ。まだデビューして3日だからわからないことだらけなんだけど、やりたいことはたくさんあるからね。』
西園寺君は楽しんで活動してくれているようだ。よかった...
『どうしたんだい?前も事務所の大きさとかを結構気にしてたけど、過去に何かあったのかい?』
「まあ昔にね...この業界って入れ替りが激しいの。仲良くしてたライバーが気付いたら卒業·引退ってこともよくあるし、ウチの事務所からも卒業した子がいるのよ。」
「卒業してった子と確執があるってわけではないのだけれど、もしウチの事務所がもっと大きかったらやりたいことやらせてあげられたのかなって考えちゃったりするの。」
リアルでの知り合いでもあるしあんまり弱気なことは言いたくないのだけれど、今の質問については正直に答えることにした。
『なるほどね。気持ちはわからなくもないけど、あんまり深く考える必要はないと思うよ。』
『東條さんが知っているかどうかはわからないんだけど、僕って物事が長く続かないんだ。』
『結構何でもある程度出来るようになったら次のこと探してって感じだからさ。だから辞めていって子達も単純に次のやりたいことを見付けただけかもしれないよ?』
『実際にどうかなんてことは本人にしかわからないけど、他人の考えや気持ちまで深く考え出すと疲れてしまうだけだし、そういう思考は今の子達がやりたいことを出来るようにって考えた方が有意義だと思うよ。』
実際どうなのかなんてわからないけど、西園寺君は励まそうとしてくれているのかもしれない。そう思うと少しだけ心のモヤモヤが晴れたような気がした。
「西園寺君、ありがとう。」
『どういたしまして。そうやって前向きに考えて、僕が配信しやすい環境を作っていってね。』
「西園寺君のために環境をよくするわけじゃないけどね。」
『いいんだよそれで。僕は後回しで大丈夫。なんだって天才だから。』
西園寺君はやっぱり西園寺君だった。
学生の時から何も変わってない。
「なによそれ。でも、ありがとね。」
『どういたしまして。それじゃあ今日の夜はよろしくね。楽しみにしてるよ。』
そう言って西園寺君とのDMは終わった。
大事な友達や後輩のことを思うとすぐには割りきれないけれど、ちょっとでも前を向いて歩き出さないとね。
まずは今日の対談に向けて『あめちゃん』の募集をしないと!
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