第4話 踊ってみたら、月面で。行ってみよう、月へ。体験プラン?
私が乗り気になったところで、シルクハットが私の熱意に冷や水を浴びせてきた。
「お嬢様が生きている間に宇宙でバレエをしようとしても、地球人として宇宙に行こうとするなら不可能です。」
「宇宙でバレエが踊れないなら、私にそんな話を持ってこないで。」
シルクハットは、私に夢だけ見せて、お前には無理だよベロベロバアするために、宇宙でバレリーナになる話をしてきたの?
人としてやったらいけないと思う。
シルクハットの中に、人はいないらしいけれど。
「宇宙でバレエを踊る地球人を地球人は欲しますか?」
「知らない。」
私はすげなく返した。
「理解者を探すだけで人生が終わりそうね。」
困った。お母さんが、賛成してくれそうにない。
私がお母さんを説得しないと。
「お母さん。宇宙でバレエを踊る未来の私を、今の地球での需要と供給目線で考えないで、未来の宇宙での需要と供給で考えて。
前例にならいながらじゃ成功しない。」
「熱意あふれるお嬢様にピッタリなプランをご紹介しましょう。
地球に閉じこもっていては見いだされない才能を発掘して、宇宙という広大なステージで才能を惜しみなく撒き散らしていただきたく、こちらのプランを用意しました。」
「どんなプラン?」
「地球の誰も俺の凄さを理解しないから、俺は宇宙に行くプランです。」
「そのプラン名、よく通ったわね?」
お母さんは、プラン名に呆れている。
「興味をもっていただくには、分かりやすいのが一番です。」
「プランの説明をして。」
「地球という惑星の娯楽を目の前で見たいという需要に応えるため。芸術に対する熱意をお持ちの未来ある若者にお声がけをしまして、レッスンはもちろん公演の手配など、マネージメント全般を弊社が請け負い、お嬢様が宇宙で踊るバレリーナとして活躍できるよう、プロデュースしてまいります。」
「どうぞ、宇宙へお帰りください。登録後、レッスン料やオーディション料と夢を吸い取られる系は、いりません。」
お母さんは、きっぱりと拒否。
「お嬢様、特例で体験してみましょう?」
粘るシルクハット。
「あなただけ、と、連れていき、契約するまで帰さない手口でしょう?」
「お母様ったら、用心深い。そこまでお疑いなら、今から月へお嬢様をお連れします。
お嬢様、試しに踊ってみたらイメージがわきますよー。」
「何の準備もなく月に行ったら、私は死ぬんだけど?」
「甘いお話ばかりですが、体験はいくらですか?」
お母さんは、どこまでも冷静。
「体験プランは、無料です。さあ、三分間の月面体験をどうぞ。」
真っ暗な世界の中、シャボン玉のような薄い膜中に私はいた。
足元だけは、明るく照らされている。
でこぼこで、ところどころ大きな穴があいた白っぽい地面。
「月に来ました。さあ、今から三分間。思う通りに踊ってください。」
シルクハットが、私の足元から、私の頭上までジャンプして、ストップウォッチを吐き出した。
「三分で帰りますからねー。気になることは試しておいてください。」
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