第12話 居場所
その夜。早速、鳴海華蓮からメッセージが届いた。
華蓮『こんばんは。起きてる?』
航介『起きてるよ。何か用か』
華蓮『用は無いけどちょっと愚痴りたくなっただけ』
航介『なんだよ』
華蓮『このメッセージのやりとりが死ぬほど面倒なのよ。もっといいテクノロジーを知ってるから。原始的すぎて反吐が出るわ』
航介『お前らからすればそうだろうけどな』
華蓮『もっと言いやり方を教えたいけどそういうわけにはいかないし、もどかしすぎる!』
航介『そこは我慢しろ。お前らがゲストなんだから』
華蓮『ゲストか。でも私、純粋な宇宙人でも無いしあっちでもゲスト扱いだから。どこにも居場所は無い』
そう言われればそうか。鳴海華蓮は宇宙人と地球人のハーフ。中途半端な立場だよな。
航介『だったら俺たち4人が居場所になる。それでいいだろ』
そう返してみた。すると、華蓮からはメッセージが返ってこなくなった。怒ったかな。俺たちだけじゃ、居場所には小さすぎるか。だが、しばらく経つとメッセージが帰ってきた。
華蓮『ありがと』
その日、鳴海華蓮からはそれからメッセージは来なかった。
◇◇◇
華蓮とのメッセージのやりとりが少し気になる。俺は翌日も朝早く学校に行った。そして、屋上に向かう。すると、やはり鳴海華蓮が居た。
「今日も来たのね」
「……少し昨日のやりとりが気になって」
「昨日? ああ、メッセージか。ちょっとセンチなこと言っちゃったよね。忘れて」
そう言って鳴海華蓮は長い金髪を掻き上げた。風に髪がなびく。やはり綺麗だ。それに思わず見とれていると鳴海華蓮が言った。
「それで? 何か他に気になることでもあるわけ?」
「気になることか……」
せっかくなのでこの機会に聞いてみるか。
「気になることはたくさんあるけど……なんで俺の記憶だけが残っているんだ?」
藤崎の記憶は消去されていた。なのに俺の記憶は残ったままだ。
「まあ……それはいいじゃん。知ってて欲しいってところもあるし」
知ってて欲しい? どういうことだろう。まさか、事情を知った友人が一人ぐらいほしかった、とかいうことじゃないだろうな。だとしたら、俺の記憶が残っていることを他の宇宙人には報告していない可能性もある。やばい橋を渡りやがって……
「それで、他には? 気になること、いろいろあるんでしょ?」
「そうだな……じゃあシンプルに。なんでいつも朝から屋上に居るんだ?」
「え? ああ、ここか。じゃあ、逆に聞くけど、私がどうやって登校していると思ってるの?」
「……そうか」
「そういうこと」
つまり、UFOか。帰りは親に送ってもらっていると言っていたし、登校もUFOなんだろう。ということは屋上が着陸しやすいと言うことだな。降りるところも見られずに済む。けど……
「だったら、かなり朝早く来てるのか?」
少し遅れると俺のように朝から屋上に来る生徒も居るかも知れない。
「そうね、校門が開く前には来てるかな」
「早いな」
「うん。だって、屋上に家が移動してくるようなもんだから。私には扉を出ればすぐ学校だもん」
「……うらやましい」
「でしょ。でも、帰りはそうも行かないからちょっと大変」
「二の丸広場か」
「うん。城彩苑から階段登って坂登って二の丸広場まで行って、そこで人が居ないところを見計らって乗ってる」
「大変だな」
「そうでもないよ。見つからないようにするのは大変だけどね」
「なるほどな」
UFO通学にも苦労はあるようだ。
◇◇◇
俺は鳴海華蓮よりも先に教室に戻る。すると、もう藤崎が来ていた。珍しい。
「星野、来いよ。面白いネタ見つけたぞ」
「なんだよ、またUFOか?」
「違う違う、もっと面白いやつだ」
そうやってスマホを見せる。そのサイトは『熊本ゴシップチャンネル』というサイト。熊本のお騒がせな記事を載せているニュースサイトだ。
「なになに……消える女子高生?」
「そうだ。二の丸広場で女子高生がふっと姿を消した、という目撃情報が相次いでいるらしい」
……間違いなく鳴海華蓮だな。あいつ、見られてるじゃないか。
「これはUFOのアブダクションだと思う」
アブダクション。つまり、UFOへの誘拐事件だ。まあ、確かにUFOに入っていってるけど。自分の意思で。
「早速調査に行くぞ」
「早速って?」
「今日の放課後だ」
マジかよ……
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