第10話 電話
土日は何の予定も無い。この機会に俺は、ネットで宇宙人の情報を調べることにした。宇宙人のハーフが地球にあふれているなんて聞いたことがないが、もしかしたら何か情報があるかも知れない。
だが、検索した結果は小説や漫画などのフィクションか都市伝説系のものばかりだ。都市伝説によると、宇宙人とのハーフは「ヒューメリアン」と呼ばれ、一部のヒューメリアンは父親と宇宙船内で暮らしていると書かれていた。さらに、テレパシーなどの超能力もあるようだ。だが、これらは都市伝説に過ぎない。何しろ大昔から居ると書かれているし、それなら一万人ではすまないレベルの人数がいそうだ。
◇◇◇
月曜日。朝早く目覚めてしまった俺は学校に早めに着いてしまった。暇なので屋上に行ってみる。朝は誰も居ないし、空気が澄んでいてすごしやすいのだ。
屋上へと続く階段を昇り、扉を開けようとしたとき、何か声が聞こえてきた。屋上に誰か居る。
「……はい、期限までにできなかったときにはもちろん従います」
鳴海華蓮の声だ。誰かと話している。
「……はい……はい、もちろんです」
どうも電話のようだな。
「……いいえ、ちゃんと確認はしていませんが……記憶は大丈夫かと」
記憶! まさか俺のことか。
「……私は問題ありません。ですが、向こうは覚えていないですし、難しいかと思ってます」
やはり覚えていないと思われている。
「……はい、そのときには消去します」
消去! やっぱり覚えているのがバレたら記憶を消されるのか。
「すみません、ご迷惑掛けて。いえ、期限までには必ず。では」
電話は終わったようだ。俺は見つからないように音を立てずに階段を降りて、何事も無かったかのように教室に向かった。
◇◇◇
「はぁ、やっぱり俺、華蓮ちゃん好きだわ」
俺の隣で藤崎が小さい声で言う。
「よかったな」
「軽く流すなよ。だって、鳥の名前も知ってるんだぞ」
「それぐらい知ってる女子も居るだろ」
「なかなか居ないよ。UFOも好きで鳥も好きなんて。やっぱりこれは運命の人だ」
藤崎はすっかり鳴海華蓮に夢中のようだ。
「そうか? お前、綾乃と盛り上がってただろ」
「はあ? あれは鳥の名前を聞かれてただけだ」
「それで教えてただろ、二人で一緒に行動して」
「だから、聞かれたから教えただけだって」
「いい雰囲気だったじゃ無いか」
「どこがだよ」
そんなことを話していると、いつの間にか綾乃が近くに来ていた。
「あれあれ? 航介、嫉妬してる?」
「はあ?」
「私が藤崎君と仲良くしてたからねえ。分かるよ」
「嫉妬なんてするかよ」
「無理しなくていいんだよ、素直になれば」
「アホか、まったく……」
こうやって綾乃がからかってくるのも久しぶりだな。前はこういうのはよくあった。
「だいたい、藤崎は鳴海さんが好きなんだぞ。あ……」
しまった、つい綾乃にバラしてしまった。
「お、お前、何バラしてんだ!」
藤崎が俺に怒る。
「アハハ、別にいいよ。だって知ってるし」
「え? 知ってる?」
「うん、わかりやすいもん。本人には言ってないから安心して」
「そ、そうか……皆川氏、そういうことだから協力をお願いしたいんだ。是非!」
「うーん、だったら私の頼みも聞いてくれるかな」
「え? いいよ、なに?」
「ここではちょっと……来て」
「わ、わかった!」
綾乃は藤崎を連れて教室を出て行った。やっぱり、あいつら仲いいと思うんだよな。あの二人でくっついたほうが良さそうだけど……
◇◇◇
放課後になり、綾乃が俺の席に来た。
「じゃあ、帰ろうか」
「そうだな……って、今日も鳴海さんが一緒か」
「うん、今日から必ず四人で帰るからね」
「……まあ今までもだいたいそうだったからいいけど」
「よし、行こう!」
これが藤崎への協力って事だろうな。俺と綾乃が先を歩き、その後ろから鳴海華蓮と藤崎が来る。校舎を出ると綾乃が言った。
「今日は遊びに行くから。ゲーセンとか」
「おう、行こう!」
綾乃と藤崎が盛り上がってる。俺は困惑して鳴海華蓮に言った。
「鳴海さん、いいのか?」
「え? 私はいいよ」
「そ、そうか」
困惑しているのは俺だけか。
バスセンターのゲーセンでクレーンゲームをする。俺は綾乃と、藤崎は鳴海華蓮とペアのような形になった。結局、俺と綾乃は一つも取れなかった。疲れた俺たちは四人で二階のカフェに入った。
約束通り藤崎がおごってくれたパフェを食べながら、綾乃が言う。
「はー,クレーンゲームって難しいね」
「最近はネットに攻略動画とか出てるから。だから、難易度もアップしてるんだよ」
「そんなの見てないし……」
綾乃が文句を言う。
「でも、鳴海氏は上手かったぜ」
藤崎が言う。鳴海華蓮は2つ取ったらしい。
「すごーい! よく取れるね」
「私、超能力あるからね」
鳴海華蓮が言った。俺は驚いて鳴海華蓮を見てしまう。それを見て、鳴海華蓮はにやりと笑った。
「アハハ、超能力か。確かにあれで取るのは超能力だよ」
「そうだよなあ、俺には無理だ」
綾乃と藤崎は冗談だと思い、笑っているが、俺は笑えなかった。でも、笑わないと疑われてしまう。俺の笑顔はぎこちなかった。
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