【8話】魔王の城でデート気分?

いかにもっていう、重々しい雰囲気が漂う魔王の城の中を、俺とレイアは奥へと進んでいった。だが、その不気味な空気とは裏腹に、二人の間には穏やかな日常の会話が続いていた。なんか、見る人が見たらデートって雰囲気じゃね?と思いつつも、見てるのは人じゃなく敵モンスターだけどな…。


「タロー、すでにレベルがMAXって言ってたけど、ヤバすぎじゃね?」


タローと会った時、すでにレベルはMAXに達しているようで、仕方がないからレアアイテムを集めてステータス強化しているという話をしていた。なので、強い敵モンスターがいる魔王の城の周辺を主な拠点にしているようだ。


「そう、そうなんです、私も正直びっくりしています。

確かに、あのレベルに到達するケースはかなり稀ですね」


レイアは珍しく感嘆の声を漏らした。


「だよなー、だからさ、あいつも仲間にした方が良かったんじゃない?

勇者代理って言ってたし、魔王討伐の力になってくれるんじゃ?」


「確かに、レベルを高次元に上昇させることで、何か魔王に有効なスキルが得られるかもと、少しの期待があったのですが、やはりいくらレベルが上がっても、魔王討伐が厳しいことに変わりありませんでした。

なので、仕方がありませんね…」


「そうか…

タロー、すげー良いヤツだったから、俺は気に入ったんだがな〜」


「そりゃそうでしょうね…、顔も同じような感じですし…」


「おい!」


「その二人に囲まれる私の身にもなってください…」


「おい!」


こいつ…!

確かに、タローを誘ったとき、レイアは妙に早口で、仲間にするのが難しい理由を延々とまくし立てていたけど、結局のところ、単に俺とタローに囲まれるのがイヤだっただけなのかよ!


「ホント、勇者なのにひどい扱いだな…。

しかしさ、魔王を倒すにはどうすればいいんだ?」


「魔王と対峙した時に、チートスキルが発動するはずです」


「そうなのか…

しかし、なんか、段取りがわからないと不安だな…」


「確かに、そうなのですよね…

でも、それよりも、私は常にあなたの見た目が不安で仕方がありませんが」


「おい!

まだ言うか!

美人は三日で飽きるって言うだろ!」


「──スミマセン、イッテイルイミガワカリマセン──」


「ボケ殺しかよ

スマホのアシスタントみたいな回答しやがって…」


俺はいつもように頭が熱くなり、気づけば意味不明なボケが口をついて出てしまう。だが、女神はまるでスマホのアシスタントのように、無感情な機械音声で返答してきた。くっ…、なんかこのやりとりが既視感を感じるな…。


「こちらの世界では、醜男は3分が限界、と言うんですよ」


「さすがに、そりゃひどすぎだろ…!」


という感じで、あれこれと二人で話しながら城の奥へと進んでいるのだが、実はこの間、めちゃめちゃ強そうな敵モンスターが100匹以上は襲ってきているのだが、いずれもレイアが一撃で倒していっている…。なんだこれ…、いいのか、これで…。




**********




「これで良かったのでしょうか?」


先ほどのレイアと、年配の男性の会話。

どうやら、その年配の男性はレイアの上司にあたる人物らしい。


「お、おい…

今、魔王の城の中だろ、よく悠長に報告できるな…」


「いや、やっぱり、この流れ、あったほうが良いかなーって?

報連相、大事!」


「いや、それは大事だが、時と場所を選んだ方がよいぞ」


「あとは、リュートの顔を見ないようにする休憩時間が必要なんですよ〜」


「お主の見た目にこだわる性格は、なんとかならんかのう…」


「で、チートスキルの詳細ってまだ分からないんですか?」


「ふむ、現在もいにしえの伝承や文献を解析中じゃ、少し待て」


「調べる気、本当にあります?」


「あ、当たり前じゃろ…」


「分かりました。

それでは、引き続き城の奥へと進んでいきます。

なんか城内デートみたいな感じになっててイヤですが…」


「こら!」

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