【7話】人違いの理由判明
俺の目の前には、いかにも魔王のものだろ!と言わんばかりの黒くそびえ立つ不気味な城があった。
黒く屈曲した尖塔が空を突き刺し、まるで悪しき力が宿るかのように周囲を不吉なオーラで包んでいる。瓦礫のように荒れ果てた壁には、刻まれた古代の紋章が不気味に輝き、冷たい風がその隙間から不気味な音を立てて吹き抜けていった。
「なんか…、絶対に入りたくない!って思える城だな…」
「ダメですよ、イヤと言っても力ずくで城に連れていきますからね!」
ビビっている俺の不安な気持ちを蹴飛ばすような勢いで、レイアは鋭い眼差しで俺を見据え、言葉をピシャリと叩きつける。
「まぁ、とは言っても、結局のところ、現れる敵モンスターはレイアがほぼ一撃で倒していっているものな…。そういう意味では安心ではあるんだけどな」
「まぁ、私の力を持ってすれば、余裕のよっちゃんですね」
「懐かしいな、その言い回し。
なぜ、レイアが知っているのか不思議だが…」
「こちらの世界では、いま流行語になっているんですよ」
「マジかよ…。
なんなんだ、この異世界の俺のいた世界との関連性は…」
魔王の城の前に立ちながらも、緊張の欠片もない雰囲気で、これは果たして良いことなのか悪いことなのか戸惑いつつも城の中に入ることにした。
「あ、そういやさ、さっきタローっていう、やたらとレベルが高いヤツがいたけど、レイアも、タローのことを知っている雰囲気だったよな」
「そうですね」
**********
魔王の城に到達する直前、偶然タローという冒険者と出会った。タローも俺と同じく異世界に転生してきたらしいが、なんと、人違いという聞いてびっくりの理由だった。
最初はその不運さに同情しそうになったが、タローの姿を見ていると、どこか生き生きとしていて、思わず心が軽くなる。結果的には人違いでも、この世界にきたのは良かったのかもしれない。
そして、タローといろいろと話をしていると驚愕の事実も判明した。
タローの本名は、
俺の本名は、
これかーーーーー!
漢字的に同姓同名やんけーーーーー!
と、人違いの理由は絶対にこれだろ、ということで、意気投合してしまった。
って、鈴木太郎と書いて、なんですずきりゅうとやねん!とツッコミたい人は多いだろう。そりゃそうだ、俺だってツッコミたい。
これは、父親が「外見より中身が重要だ!」という信念のもとに名付けたもので、名前の漢字には平凡さを、そして読み方には立派さを込めるという思いがあったようだ。
まぁ、結果的に、俺は未だに中身も平凡のままで、すっかり名前負けしているけど。
ちなみに、俺とタローが意気投合している間、レイアは完全に放置された形になったので、怒ってやしないかと不安になったりしたが、例の頭上に天使の輪のような光を浮かべながら、どこかの誰かと楽しそうにおしゃべりをしていた。俺とタローが一通りの話を終え、「じゃあ、また会おう」と会話が終了しても、レイアは会話を続けることに夢中で、結局、約3時間もの間、俺たちはただ待たされる羽目になった。
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