第4話

 それから一週間、引っ越しの準備や手続きなどを終わらせ、瑞稀の家へ向かう。

 お金がなくて、殆ど物がなかったので、段ボール箱一個に納まってしまった。

 繋いだメールアプリに送られた家の位置情報を確認しながら歩くことに十分、ついに、家に着いた。

 

 そこはマンションの一室で番号は302だった。

 そのマンションは三階建の横長で真新しい感じがする。

 ずっとボロアパートに住んでたからかな?


 部屋の前に着くと、私は深呼吸をする。

 はぁーっ緊張する。

 なんだかんだ顔を合わせるのは4回目くらいである。

 ドキドキしながら、インターホンを鳴らす。


 「はいはーい、神谷です」


 「ええーと瑞稀、私だよ」


 まだ慣れないが、瑞稀の提案でお互いタメ口で話している。

 そういうとすぐにドアが開いた。

 そこで目にしたのは、前は後ろで結んでいた髪を完全に解いてある瑞稀だった。

 前はかっこいい感じだけど今日は可愛いな、なんてことを考えていると、

 

 「か、かわいい」


 気付かぬうちに、口ずさんでしまった。

 またお互い微妙に気まずい雰囲気になる。

 再度確認するがまだあって、一週間程度の仲なのだ。

 基本的にこうゆう雰囲気になるのも仕方ないだろう。

 同棲するケース自体が特殊ではあるが

 私はこういうことを言うといつも顔のあたりが熱くなるが、心なしか瑞稀の頬も赤い気がする。


 「あ、ありがと、それより入って」


 ボソボソっとそれだけ言うとさっさとリビングに隠れて行ってしまった。

 大胆にナンパしたり照れたりいったいどっちなんだ。 

 私はそこでこの世のものとは思えない光景を目にする。

 めっちゃ綺麗。

 色々なものが置いてはいるが、上手く整理整頓されていてる。

 けど、それより今は照れている瑞稀を揶揄いたい。


 「瑞稀もしかして照れてた?」

 「う、うるしゃい、かっこいいはあっても可愛いって言われたことはないんだよ!」

 

 へー可愛い、とまた言うと、どんどん瑞稀の顔が赤くなる。

 

 「クッ、これはお仕置きだな」


 そう言って瑞稀はわたしの脇腹をくすぐってくる。

 ビクッとなって床に転がる。

 

 「脇腹は弱いからダメーッ」

 

 「じゃあ耳」

 

 「ひゃああ!?!」

 

 そういうと、耳を甘噛みされる。

 

 「この世で一番晴香の身体こと知ってるのは僕だからね」

 

 力が入らなくなって私は膝から崩れ落ちた。



 「まあ、なんだかんだで神谷ハウスへようこそ、マイハニー!」

 

 私たちはスポーツマンのように握手を交わした。


 そうして、私と瑞稀の同棲生活は始まったのだった。

 

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ナンパにのったら可愛い彼氏?ができた となかみ @atenamur

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