第28話
『きれいごとの何がいけないんだよ』
怒っているようにも、冷静に相手を説得しているようにも見える、その姿。
こんなチャマは、今まで見たことがない。
『おまえら、きれいごとも言えねぇような、余裕のない人生なのか?』
俺は、こいつの瞳だけは曇らせたくないと思っていた。
『俺たちの曲に…藤原の書いたものにそんな能書きたれて、おまえらこそ何様のつもりだ?』
こいつだけは守りたい、そう思っていたのに。
『悩みも苦しさも全部飲み込んで、笑ってきれいごとを言える人間こそ、一番強いだろうが!そんなこともわからねぇで、こんな大それたことしでかしたのかっ!!』
からっぽだった俺の中に、光がなだれ込んでくる。
ああ、俺は今、こいつに守られてる。
為す術もなく崩れ落ちようとした俺のちっぽけな心を、チャマが…
ぼろぼろに傷つけられ、涙を流し、それでも必死に正義を振りかざす強さ。
俺にはまぶしすぎる、その言葉。
『覚えとけ。俺らが決して、良い思いばっかりして来たわけじゃねぇってことを。むしろギリギリの、綱渡りみたいな人生の中で、助け合って来たことを!藤くんがきれいごとすら口に出来なくなったら、それは俺らの終わりを意味するんだってことをな!!』
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