第26話
気がついたら、俺もヒロも秀ちゃんも、相手側の残りのメンツも、全員入り乱れて取っ組み合いになっていた。
ふざけんなと、何度も何度も叫んだ。
こんな茶番で、俺のチャマを、うちのバンドを、俺らの大事な曲を…
そう思う端から、目の前のバカどもは汚い言葉をぶつけてくる。
「藤原テメェ、何様のつもりだよ!どんだけ売れてるったって、結局は、実現できねぇ理想言ってるだけだろうが。きれいごと言ってるだけだろうが!」
「きれいごとがどんだけ人を傷つけんのか、想像もしねぇでやってんじゃねぇか!」
「負け組の気持ちがわかるフリをし続けてるだけで、結局は勝ち組なんだろうが!」
「おまえらがどんだけの人間を傷つけてきたか、わかろうともしねぇでよ!!」
連中の血を吐くような叫びを前にして、俺は言葉を失った。
足もとが抜けるような、底知れない闇が迫ってくる。
社会的な、経済的な成功を収めた、勝ち組。
俺たちをそう呼ぶのだとしたら。
…もう俺には、真の意味で“負け組の気持ちを理解する”ことは出来ない?
つーか、負け組って失礼な。
だって俺たちは、負け組と紙一重の生活だぜ?
売れなくなったら容赦なくレコード会社との契約切られて、放り出される身だぜ?
職歴から考えても、それ以降の就職なんてとても見込めない。
そんじょそこらのニートには絶対に負けない、天下無敵の負け組になっちまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます