第25話

その途端、チャマがキレた。

いきなり沸点に達したみたいな、凄まじい感情の爆発だった。




『当たり前だろ!自社スタッフを疑ってどうすんだよ!』


「単に雇われてるだけの人間を信用できんのか!ちやほやされてる人間ってのはこれだから甘ぇんだよな!」


『誰が信用するっつったよ』


「なに?」


『頭から何でもかんでも“信用する”わけじゃねぇよ。ただ、一緒に仕事をする仲間であれば、“疑わない”のはむしろ当然だろうが!!』


「………」


『何も言えねーのか。そういやおまえ、昔俺のベースのこと散々こき下ろしてくれてたよな?技術がないだの、目立ちたがり屋だの、そりゃもうすげぇ勢いで!そんな俺でも、今はプロだよ。おまえがこんなショボい脅迫状書いてる間に、俺は先に進んでんだよ!!』


「うるせぇ!!」




ベーシスト同士の言い合いは、やがて方向性を見失い、掴み合い殴り合いに発展していく。

結局、こいつの脅迫の根本にあったのは、臼井にいた頃から何も変わらない、チャマへの羨望と嫉妬心。


それは、俺たちからすれば、人生を賭けてまで恨むようなことではない。

けど、きっとこのバカにとっては、俺たちを恨むことが生きる支えだったのだ。

俺たちとは決して交わらない、でも、些細かどうかは本人だけが決めること。

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