対決

第20話

カ「どうしたの4人とも!ほら、難しい顔しないで、もう一回笑ってぇ~」

増「…あ、ごめんなさい」

升「すいません。つい話し込んじゃって」



カメラマンの声で、はっと我に返る。

いけないいけない。今は仕事中だった。

しかも、俺たちにとっては数少ない、表舞台に出る仕事。



カ「疲れたなら終わりにするよ。そのかわり、最後にとびっきりの笑顔ちょうだい!」

藤「じゃあカメラ目線いっときますか?」

直『っしゃ!はい、チーズ☆』



にーっと声を出して、4人揃ってヘン顔で決めてやった。

カメラマンも周りのスタッフも楽しそうに笑い、撮影はそこで終了。

…あいつも、にこやかに「お疲れさまでしたー」と言っていた。


“疑わしきは罰せず”?

“疑わしきは被告人の利益に”?

いつか学校で習った空虚な建前論が、俺の目の前をさまよい続けている。






楽屋に戻ったあとも、俺たちのこそこそ話は続いた。

幸か不幸か、普段から“仲良しバンド”と認識されている俺らは、4人だけでつるんでいても誰も怪しまない。

逆にほっといてもらえる。



升「さて、どうする。あいつ捕まえて、聞いてみるか?」

増「でもさ、下手な聞き方して、もし間違いだった場合どうするの。ヤバくない?」



メイクを落としたり着替えたりしながら、4人で話し続ける。

ヒロの言うこともわかるんだけど、それじゃいつになっても確かめられないんだよな。

あの脅迫状に従って、深夜零時に埠頭の倉庫に行くまでは。


って、脅迫状?……あ、そうか。

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