第13話
藤「ところでおまえ、さっきあの小部屋で何してたの」
直『…呼び出されてたんだよ。また、例の電話で』
びきっ。
自分のこめかみに今日だけで何本目かわからない青筋が浮いた気がするが、理性を総動員して穏やかさを心がける。
大丈夫、うつむき加減のチャマには見えてないだろうし。
…隣に座るヒロはいつでも逃げられそうな及び腰、秀ちゃんの顔もかなり引きつってるけど、気にしない。
藤「もしかして、脅してるやつが部屋にいた…?」
直『…っていうかさ。今までは、電話で呼び出されて、なんか雇われたみたいな男たちに殴られるだけだったんだけど…今日は違った。黒ずくめのヤツが1人だけいて、襲われそうになった』
藤「襲わっ…!?」
直『大丈夫、すぐ逃げたから!けど…情けないけど、マジで怖くてたまんなかった』
俺が我を忘れて立ち上がり、手元のボールペンを片手だけでへし折った時。
ヒロが「ちょっと外の空気吸ってくる」と出て行った。
秀ちゃんも無言で後に続く。
楽屋に2人きりになった瞬間、チャマが涙をこぼした。
直『ごめん、ごめ…藤くん…今だけ、泣かせて…』
藤「うん。つらかったよな。ごめんな、俺のせいで、おまえだけこんなに苦しめて…」
声を殺して、でも全身を熱くして涙を流すチャマ。
その背中を抱き寄せる俺の手は、折ったボールペンのインクで青く染まっている。
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