真実

第8話

もう違和感とかそういうレベルの話ではなくなった。

ていうか、万が一、万が一のことがあるとすれば、それは既にチャマ1人の問題じゃない。



升「だからってどーすんだよ。本人に直接聞くか?」

藤「そんなこた言ってねぇだろ!」

増「だけど、肺がんだっけ?そうは思えないけどなぁ…チャマ全然元気じゃん」

藤「だから、それが逆におかしいんだよ。妙にテンション高いべ、最近。もしかしたら病気のこと隠すために、無理に元気出したりとかしてんじゃないかな」



本日は夜までスタジオに缶詰で、アルバムのレコーディング。

チャマのベース録りが始まったところで、3人で抜け出した。



升「わかったわかった。さてはおまえ、最近チャマと出かけたりしてないな?」

藤「……………」

増「あら、図星?」

藤「…プライベートなことなので…」

升「そんな態度を取ってる時点で、自白したも同然だろ」

増「なるほどね。俺たちと一緒の時、つまり仕事の時か、友人として過ごす時にしか会っていないと」

藤「べ、べつに欲求不満てわけじゃないし」

升「おい、語るに落ちてんじゃないよ」

増「藤くんをここまで取り乱させられるとはねぇ。さすがチャマ」

升「要するにおまえは、肺がん云々も心配だけど、チャマが1人で悩んでるのかもしれないってのがいちばん気になるんだろ?それが気に入らないんだろ?」



…そう。あれこれ理屈をこね回しても、結局はそういうことだ。

最近は忙しかったせいか、全然チャマとゆっくり話す時間がとれない。

それで、微妙な変化にも気づかなくて。

でもどうしたらいいかわからなくて。


イライラしながら煙草を取り出した俺に向かってヒロが放った言葉は、だからこそまた不安を増大させる。



増「そういえば、チャマ、ここんとこ煙草吸ってないね…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る