展開
第5話
次におかしいなと思ったのは、某インターネット配信の映像を録る仕事の時だった。
今度は絶対に俺の気のせいだけじゃない。
だって、最初に疑問を呈したのが俺じゃなかったんだから。
ただしそれは、俺が感じてたみたいな漠然とした違和感じゃなくて。
もっと具体的で差し迫った問題として、俺たちの前に放り出された。
その日は朝から雨で、俺たちは車なりタクシーなりで、収録場所に集まった。
楽屋に入ると、スタッフが飲み物を持ってきてくれて、テレビをつけて出て行った。
まだ3人とも来てないのか…遅刻常習犯の俺にしては上出来だ。
テレビでは、アナウンサーがニュースを読み上げている。
―――今日の正午過ぎに東京都××で起きた玉突き事故で、警察は…
―――長引く円高対策の一環として、日銀総裁と金融庁長官が…
―――肺がん治療の特効薬として期待されている新薬が、聖エドワード記念病院で試験的に使われ始め…
―――去年11月にいじめが原因で自殺したとされる中学生の両親に…
見事に湿っぽいニュースばっかだ。
でもまぁ、差し迫った災害とか事件とかがないだけマシなのかねぇ。
ギターをいじりながらお茶を口に運んでいると、升増コンビが揃ってやって来た。
増「おはよー」
升「おはよう。あれ、チャマまだ?」
増「珍しいね、藤くんが一番乗りなんて」
藤「だから雨なんじゃねぇの、今日」
直『呼ばれて飛び出て、じゃじゃじゃじゃーーん!!いやぁ、藤くん早いじゃなーい』
藤「ぶっ…おま、普通に出てこれないのかよ(笑)」
そこへ、スタッフが「打ち合わせが始まります」と声をかけに来た。
わやわやと4人で出て行くときに、誰かの足がチャマの荷物を蹴飛ばしてしまった。
秀ちゃんが、こぼれ出た中身を拾ってやっている。
雨脚が、いっそう強まった気がした。
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