第34話

もちろん詞だけじゃないけど、そこに一緒にある声も音も、何よりおまえ自身も必要だけど。

そう言ってチャマは笑う。



直『でもね、それは自分を否定することには繋がらないんだ。“俺もああなりたい”と思う気持ちも無くはないけど、それより全然大きな気持ちで、“でも藤くんは俺と同じで弱い部分もあるから、そばにいたい。一緒に頑張りたい”って思うの』



…だから?

だから、俺を大事にするのは当たり前?



直『もしかしたらファンの子たちもそうなんじゃないかなぁ…。そうやって藤くんを好きでいることで、結果的に自分も好きでいられるでしょ?』

藤「………」


直『それに藤くん、自分の音楽を聞いてくれる人のこと、ほんっっとうに大好きじゃない。好き同士で両想いだよ、やったね!』

藤「…んだよ、それ…わけわかんねー…」



本当はすごくよく分かったけど。

嬉しくて涙が出そうになったから、チャマの両足に目を押しつけて、必死でこらえた。



直『でもごめんね。そうやって俺らは、藤くんに大変なところばっかり全部押しつけて、色んなことの矢面に立たせてるだけかもしれない…』


藤「…ちがう。おれはうたいたいからうたってるだけだし、ひとりじゃもしかしたらダメになってたかもしれないし。おまえらがいっしょにいてくれるから、いやなことがあってもがんばろうとおもうし…」



どうすれば伝えられるだろう。

チャマがいてくれて良かった。

ヒロと秀ちゃんがいてくれて良かった。

スタッフやファンのみんなに、この気持ちを…



藤「うれしーよ…おれ、ずっとうたっていたい…」



そう言ったら、チャマは『やった!』と目を輝かせる。

歌い続けるのは俺のワガママだっていうのに、何がそんなに嬉しいんだ?



直『そうなんだよー。結局さ、みんな藤くんにずっと歌っててほしいんだよ。他は何が変わっても変わらなくてもいいから、それだけはやめないで。ごめんねワガママで。でもお願い、俺たちのために音楽を続けて!』

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