第31話

かわるがわる3人に肩車されながら(半ばおもちゃにされながら?)、スーパーに到着。


その日の夕飯は鍋にすることになった。

俺は別に何でもいいのに、3人は子供にも食べやすそうな物を優先して買い込んでいく。



増「はんぺん入れる?おでんみたいになっちゃうかな?」

直『いや、いーよ。あとさ、鶏の挽肉買っといて。肉団子にすれば、普通の肉より食べやすいから』


升「チャマ、白菜1/2のでいいか?」

直『おぅ、よろしく!あ~春菊はNGだよ。かわりに水菜とホウレン草ね!』



俺の手を引きながら、ゆっくり歩いてくれるチャマ。


この身長でながめる外の世界が珍しくて、ついキョロキョロしていたら、近くにいた小さな女の子と目が合った。

身長的にちょうど視線がぴったり。


どうも、という感じで思わず会釈したら、その子はパタパタとお母さんのところへ走って行ってしまった。


数秒後、案の定お母さんがこっちを見て微笑む。



…何を言われたのかは大体想像がつくなぁ。

だって、目の前にいきなり怪獣姿の子が現れて、「どうも」だぜ?

俺だって親に報告するね。


やれやれと溜め息をついていたら、チャマが腰をかがめて俺の顔をのぞき込んできた。



直『藤くん、どした?』

藤「なんでもない」

直『そう?夕飯の材料は揃ったけど、他にほしいもんある?』

藤「ううん。それより、あしがいたい…」

直『あー。そっか、そうだよね』



経験者のチャマは瞬時に理解してくれたようだ。


この姿って、予想以上に体力の消耗が激しいんだよ。

歩くだけでもかなりのパワーを使ってるらしくて、すぐ疲れたり眠くなったりするし…



直『よーし、帰ろっか。早くしないと、夕飯前にゴジラ君の充電が切れちゃう!』

升増「「おー」」








店を出たら、もう日が暮れかかっていた。

一歩ごとに暗くなっていくような帰り道は、子供の視点ではものすごく怖いものに見えた。


すれ違う小型犬(リード付き)にも内心ビビる俺を見て、チャマはにっこりと笑う。



直『ほい、背中乗って』

藤「え?」

直『いいから』



…チャマにおんぶしてもらう日が来るなんて、夢にも思わなかったけど。


その背中があまりにも温かくて心地よくて、俺は家に着くまでずっと、ウトウトと幸福なまどろみに浸っていた。

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