第30話

直『2人とも何言ってんの、俺があんな美女役とか出来るわけないでしょ!まだ藤くんのがアリだよ』


増「じゃあ、今は藤原が紫の上ってこと?」

升「…の、子供時代役かな」

増「ええ~~??」

升「そんなあからさまに“違う”って顔すんなよ」


増「だって!源氏物語って俺そんな詳しくないけど、とにかく魅力的で可愛い子じゃないと。あんな眉間にシワ入りまくりじゃぁ…」



おうおうヒロくん、言ってくれんじゃねーか。



直『てゆーかそれ以前に、光源氏役が不在だし』

升「チャマじゃないの?」

直『えー?なんか違わない?』



いらいらいらいらいら。



藤「おれにきこえるようにいうなよ!」

増「はーいはい(笑)、ごめんね。ほら暴れないの。そろそろ散歩行こっか?」


藤「えー…めんどくさ…」

升「夕飯の買い出しも兼ねてるんだよ。ほれ行くぞ」



そう言って、秀ちゃんがひょいっと俺を抱き上げた。

そのまま肩車状態に持ち込まれる。



藤「わっ、わっ…」

升「少しは視界が良くなったろ?」

藤「…ん」



少しは、どころじゃない。

世界が劇的に変わった。

窓の外が美しかった。


…ほんの少しだけ、機嫌が持ち直す俺。

そのまま4人で外に出た。







眩しい夕陽が、俺たちを照らし出す。



増「でもさぁ、藤原のその服…」

直『ふふ…(笑)』

升「カワイイよな。やっぱ似合ってるし」



地面に長く伸びる影の先には、耳と尻尾の形。

何を隠そう、ちびゴジラの着ぐるみだ。



藤「がおー!あんまりからかうと、ほのおはくぞ!!」

3人「「『あははははは!!!』」」


直『かっ…かわいい、超かわい~!もうどうしよう、俺きみのこと大好きだわ!!』

増「いや~可愛いなマジで!」

藤「な…、なんだよっ」



精一杯の抗議だったのに、3人に笑い飛ばされてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る