第25話

その夜は結局そのまま寝ることにした。

マジで睡眠だけだよ?

健全に、普通にベッドに入っただけ。


彼が幼体化してるうちはあれだけモヤモヤしていた俺の妄想も、元に戻った途端になぜか引っ込んでしまったから。



藤「まぁ、またいつでも出来るしな」

直『んー…??』



ぼそっとそう言った俺に、半睡状態のチャマが反応する。



藤「何でもねーよ。おやすみ」

直『ぉやふみぃ~…』



うん。ちゃんと寝ろよ。

明日からまた仕事なんだから。

おまえの担当分だけ、おまえにしか出来ない箇所が、全部遅れちまってるんだからな?



藤「…確かに、プレゼントか」



寝息とともに揺れる長いまつげに引き寄せられるかのごとく、閉じたまぶたに唇を寄せる。

髪からは、俺と同じシャンプーの匂い。



藤「おかえり。チャマ」



そして俺も目を閉じた。


―――明日起きたらまた子供に逆戻りしてました、なーんてハプニングは、謹んで遠慮しまくるぞ?







翌日。

心配したような事態にはなっておらず(良かったよ)、2人そろってスタジオへ行った。

スタッフも、1週間ぶりに姿を見せたチャマを嬉しそうに迎えて入れている。



増「でもさぁ…チャマを何年でも待つ覚悟だって、藤原言ってたけどさ。まぁ一見美談だし、聞こえはいいんだけど」

升「あぁ」


増「どう考えても、戸籍もない子供をそのまま育てるって無理があるよね。それこそ“藤原基央、誘拐か!?”ってさ、大スクープにされちゃうよ」

升「そりゃそーだな」



…朝っぱらから不穏な会話をしてる2人もいるが。



藤「おまえら、そういう過ぎたことをいつまでもグチャグチャ言ってんじゃないよ」

増「あ、過去のことにしようとしてる(笑)」


升「チャマ、今日は相当忙しいだろうな~。最低何本録らなきゃいけないんだっけ?」

藤「んー…たくさんなのは間違いないけど。たぶん細かく色々変更してくるだろうし、秀ちゃんもなるべくブースにいてやってよ」

升「うん」



そんな日常がまた戻ってきたと思ったのに。

…事態が急変したのは、その日の午後、休憩時間中のことだった。

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