第22話
それから数時間後、だいたい予定通りに仕事が終わった。
車窓から見える街並がどんどん夜の雰囲気に包みこまれていき、早く帰ってやりたいという気持ちに拍車をかける。
携帯の表示は、午後6時45分。
藤「ヒロー、急いでー」
増「贅沢言うなよ。安全第一でしょ」
升「しかしチャマのやつ、なんでまた俺たちも来いなんて言い出したんだ?理由聞いてないの?」
ハンドルを握るヒロはあくまでマイペース。
助手席の秀ちゃんから投げかけられた質問は、ついさっきチャマ宛に送った“今から帰るよ”というメールの返事、“ヒロと秀ちゃんにも来てもらって!”を踏まえてのものだ。
増「プレゼントがどうとか言ってなかった?」
藤「言ってたけど…全然わかんないし」
升「俺らにも関係あるものなのかねぇ」
藤「うーん…」
夕方チャマから来ていたメールの添付画像を開く。
さっきから何度見返しても、意図の読めない1枚。
写っているのは、何だかはっきりとは分からない、白系の布みたいなものだった。
藤「ただいま~」
升「こんばんは~」
増「チャマ、来たよー♪」
わやわやと玄関を抜けてリビングへ入っていった俺たちを待っていたのは、テーブル狭しと並ぶ豪勢な料理の数々。
藤「えっ?」
増「おぉ、すごいじゃん」
どうしたんだろう、手の込んだ料理ばかりだ。
急いでキッチンに向かうと、そこにいたのは―――
直『おかえり藤くん!』
藤「…おま、え…」
チャマだった。
おたまを持って、火にかけた鍋の様子を気にしつつも、俺の方を向いて笑う“大人の”チャマだった。
7日前、ここに来た時に着ていた服を身につけて。
目線は俺よりほんの少しだけ低い位置で。
もう踏み台なんて乗らずに…
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