第21話

直『…なんねんでもまってくれるんじゃなかったの?』

藤「何年でも待つよ。そりゃそうだよ。でもさ、子供とはいえ自分の好きな奴が目の前ウロウロしてんのに、全然手ぇ出せないってキツいじゃん?」

直『それはそうだけど…』



涙目をキョトキョトさせている様がいじらしい。



藤「…ごめん。冗談」

直『へ?そーなの?』

藤「全くの嘘でもないけど」

直『どっちだよ!』



今度は頬をむーっと膨らませて怒り出す。



藤「だから、もうちょっと大きくなったらな」



そう言ってから軽くデコピンしてやったら、チャマはよろけて転びそうになった。



直『わっわっ……なにすんだよ~!!』

藤「ごめん(笑)」

直『あーもう、よけーなことばっかりしてないで!さっさとしごといったら!?』

藤「…うん」





そうして、スタジオへ向かった。


着いた早々、先に作業をしていた秀ちゃんとヒロが現れて、色々と細かい相談を持ちかけてくる。

マネージャー、エンジニア、様々なスタッフもごく当たり前のように働いている。


…ここにチャマだけがいない状態に、みんな慣れてきているのだろうか。

風邪だの何だのという言い訳も、もうとっくに限界を超えて…





携帯にメールが入ったのは、夕方のことだった。

近くのカフェからデリバリーしてもらった飲み物で、みんな一息入れていた時のこと。

コーヒーに添えられた焼き菓子を見て、チャマに持って帰ってやろうかなと考えていた、ちょうどその時。



―――藤くん、今日って何時頃に帰ってこれそう?プレゼントがあるんだよ~。



細くて短い指で悪戦苦闘しながら携帯をいじる姿を想像して、思わず微笑がこぼれた。



―――7時には帰るよ。夕飯一緒に食べような。



そこまで返事を打ったところで、「藤原さん、ちょっと」と声がかかる。

「はい」と答えながら、慌てて送信ボタンを押した。





チャマからのメールに添付されていた画像を見そびれたが、まぁまた後でいいだろう。



藤「プレゼントねぇ…」



親ヤギのコスプレとかだったらどうしようと思いつつ、俺は譜面を手に取った。

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