第18話
それから2人でプリンを食べた。
テーブルに向かい合って座ったのは、チャマがこの姿になってから初めてのことだった。
夜の室内に、ほのぼのとした空気が立ち上る。
直『おいしい』
藤「そっか…良かった」
子供用のイスなんて無いから、普通のイスに何枚も敷物を重ねて座っている。
ここ数日の彼の習慣。
藤「おまえ今まで、不安なの隠してたんだろ…?」
直『…そんなことない…っていいたいとこだけど…』
藤「うん。いや、そんなの当たり前じゃん」
あめ玉1つで突然幼児化して、元に戻るすべもわからず、ただ俺の家にいるだけの時間。
きっと長く感じたことだろう。
ゲームやテレビでつぶせるヒマにも限界がある。
きっと、余計なことまで考えたに違いない。
それでも俺たちの前では天真爛漫な子供として笑って、1人で夕陽を見ながら泣いて…
藤「ごめんな。俺、おまえのこと守ってるつもりで、何にも分かってやれてなかった」
直『そんな!ふじくんはわるくないし!』
藤「でも俺、目先のことばっかでさ。そういう意味じゃ、ヒロとか秀ちゃんの方がよっぽど先のことまで考えてくれてるよ。仕事のこととかもあるし…」
そう言ったら、チャマは食べかけのプリンとスプーンを置いて、てこてことソファの方へ移動した。
藤「何?どした?」
直『そんなことないよ…おれがいなくっても、しごとはだいじょーぶなんでしょ?』
藤「は!?何言ってんだ、そんなはずねぇだろ」
直『だってベースもふじくんがひいてるんでしょ!?』
思い出すのは、仮録音の時に触ったベース。
いつも見慣れているチャマ仕様のものとは違って、何だか違和感が先立ったっけ。
藤「それは…とりあえず形にしときたかったから、仮で…」
直『ほら、けっきょくそういうことじゃん!じゃあなに?おれはこのままでもいいの?だれもこまんないってわけ?』
―――ばんっ
藤「いい加減にしろ!!」
テーブルを叩きつけ、怒鳴った。
幼い身体がびくっと震えるのが見てとれたが、今は構っちゃいられない。
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