第17話

プリンの箱を見せる。

その途端、大きな瞳から涙があふれ出した。



直『…う、わあぁーーん…』

藤「チャマ!?」



ごめん、1人でさみしかったか。

そう言って抱きしめると、しゃくり上げながら懸命に答える幼い声が聞こえてきた。



直『うぁーん…、おれ、まってたのにっ…ふじくん、すぐかえるって…ゆーからぁ…』

藤「…悪い」


直『…ベランダのまど、おもくてあかないんだもん!…だからせめて…っ、ここでまってれば、おれのすきなもの、かえってきたらすぐみれるかな…って…!!』



あぁ、夕陽か。そうか…ごめん。

でももうとっくに沈んでしまって…

謝ろうとしたら、必死の叫び声に遮られた。



直『ちがうよ!ちがうもん!おれがいちばんすきなのは!!』

藤「え?」

直『おれがいちばんさきにみたかったのは…』



…あ…。



直『…ゆうひじゃないもん…』



泣きながら必死で抱きついてくる身体が、突然ふわりと軽くなった気がした。



―――おまえが大好きだっつってたもん、見せてやるから。



夕陽より、プリンより。



藤「…なに?好きなもんって」



言わせたくて、言ってほしくて、…聞きたくて。



直『えっ…』



急に恥ずかしくなったのか、口をつぐむ恋人。



藤「なぁ、教えてよ。何が好きなの?」

直『えー。。…ものっていうか…ひと?』

藤「…うん」



そっと俺の頬にふれてくる、可愛らしい唇。



直『いまね、おれのほごしゃのひとなの…』



チャマはそう言うと、幸せそうに笑った。

涙で濡れてるくせに、誰よりも輝いた顔だった。

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