第16話

…。

………。

……………。

…………………、



いやいやダメだダメだ、何考えてんだ俺は。

そんなこと考えてる場合じゃないだろう。


自問自答、半永久機関と化した自分の脳内堂々巡りが怖い…







それからすぐ、仕事に行った。


前日に比べたら全然早く片付いたので、急いでプリンを調達して家路についた。

あとの2人は今日は自宅へ帰るらしい。


ヒロの車で送ってもらう最中窓から見えたのは、世の中の全てを染め上げるかのような怒濤のオレンジ色。




…不意に、恋人の笑い声を思い出した。

4歳のじゃない。

今の俺がいちばんよく知ってる、30をこえたアイツの顔だ。


夕陽が好きだと言っていた、でも最近は感動するようなのを見てないから見たいと言っていた、チャマの。


…携帯を取りだす。



藤「もしもし」

直『…ふじくん?』

藤「おぅ。ごめん、寝てた?」

直『…ううん…どうしたの?おれいまゲームしてていそがしいんだけど』



ちょっとツンとしたような口調。



藤「そりゃ悪かったな(笑)…いや、今帰りの途中なんだけどさ。あ、ヒロの車乗せてもらって」

直『………』

藤「おまえベランダ出られる?今さぁ、」



夕陽が、と言いかけて、ふと口を閉じた。

そんなことを言っても、また昨日と同じ状態になって、スネてしまうかもしれない。



藤「…いや、ちょっと待ってろよ。もうすぐ帰るから。おまえが大好きだっつってたもん、見せてやるからさ」



しかしその直後、事故渋滞にはまってしまって。

家に着いたのは2時間以上も後のことだった。







藤「ただいまー。…チャマ?」

直『………』



寝ちゃってるかなと思ったけど、チャマは起きていた。

暗い部屋の中、タオルケットにくるまって。

北西の窓辺に座り込んで。


子供らしくない目つき…

表情をどこかに置き忘れてしまったかのような顔。



藤「…チャマ。遅くなってごめんな?これお土産」

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