第15話

次の朝になっても、チャマは元に戻る気配を見せなかった。

あのランプを持ち出しても、キャンディもチャマ本人も何一つ反応しやしないし。


業を煮やして「う~ん」と唸る俺たち。

どういう仕組みなのか、全く理解不能だ。


そうこうしているうちに、午前中からスケジュールの入っていたヒロと秀ちゃんは早々に「いってきまーす」と出て行き(また帰ってくるつもりか?)、俺はチャマと2人で部屋に残される。




まぁ腹も減ったし、俺らもいったん休憩するか…というわけで、テーブルに並んで昨日ヒロが買ってきたパンを頬張った。


対面で座ってもいいんだけど、そうするとチャマに何か食べさせてやったり、こぼさないよう気を付けてやったりという作業がしにくいから。



藤「そういや、昨日の夕飯はちゃんと食べられた?」

直『うん!おいしかったよ~』



まぁ、レトルトのシチューをチンすれば良かっただけだから、僕ちゃん1人でも問題なかったご様子ですね。



直『おれさ、たべるまえにひるねしてたからさー。おきたらすぐゆうはんってかんじで、へんなきぶんだった』


藤「あぁそっか。…やっぱり午後ってかなり眠くなる?起きていようと思えば大丈夫なもんなの?」



幼稚園とか保育園だと、必ず昼寝の時間ってあるからな。



直『しぜんにねむくなるよ。きのうはね、2じごろねたのかな?そのあと、ふじくんからでんわもらうちょっとまえに、ゆうひがまぶしくてめがさめたんだよねー』


藤「あー。昨日けっこう凄かったもんな。向こうの窓からも見えただろ?」


直『…だめだよ、いまのおれじゃ。にしがわのまど、せがたりなくてさ。ひかりしかみえなかった』


藤「そうか…おまえああいう景色好きなのにな。残念だったな」



俺が一緒にいたら、抱き上げて窓辺に立てただろうに。



直『ん~、たしかにすきなんだけど…でもさいきん、かんどーするようなのはみてないからなぁ。みてみたいなぁ』



目をキラキラさせてそう言うチャマはとても魅力的で…正直、抱きしめたくなった。

昨日の朝の風呂場での妄想がよみがえる。


―――今ここは、2人だけの密室。


他人からしたら「子供相手に何バカなことを」という感じかもしれないが、俺だって真剣だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る