第13話

直『これはしょーげきてきだね』

藤「でも子供の頃って、こういうの履いてたよな…」

増「あれ?気に入らない?」



にやりと笑うその顔は、間違いなく確信犯。

…こいつめ、人の不幸を…



藤「おまえなぁ」

直『いーっていーって、ふじくん』

升「まぁ大目に見てやれよ、柄くらい」

藤「おまえも一緒に行ったんなら止めろよぉ」



よっぽど情けない表情になってたんだろう、秀ちゃんが俺の顔を見て笑い出した。



直『でも、ポケモンとかよりはこっちのがマシかな…』

増「でしょでしょ。ほら、俺は間違ってない!」

升「…あくまでマシってだけだけどな」



それにしたって、俺たちがポケモン世代ではないっていう、ごく単純な理由なんだけど。



藤「は~…じゃあチャマ、着替えるか?」

直『うん』

藤「手伝う?」

直『だいじょぶ、ひとりでやってみるよ。それより3にんとも、しごとは?そろそろじかんじゃないの?』



チャマの言葉には、言外に“出来るだけ1人で何でもするようにしなければ”という決意が込められていた。

それを察して、俺たちも「そうだな」と頷く。







そして数十分後。



直『いってらっしゃーい♪』

藤「…いってきます」



ニコニコと上機嫌で手を振るチャマに見送られて、俺たちは仕事に出かけた。



増「知らない人が来ても、出ちゃダメだよ」

直『あたりまえだろぉ~』



ただし、その服装は。



升「…似合うもんだな、そういうの」

直『えへへ、そう?やっぱり?』



玄関先でくるんと回ってみせるチャマ。

(とはいえ子供のことなので、その回転に擬音を付けるとするなら“とてててて…”って感じなんだけど)


本日の増川チョイスの中でもいちばん異端、もとい個性にあふれた子供服。



藤「…オオカミに食べられてもいいのか?」



―――真っ白なポンチョとふわふわ帽子がメインの、子ヤギの着ぐるみだった。

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