第11話

リビングへ出て行ったら、ソファで心配そうにしているヒロ&秀ちゃんと目が合った。

しまった。あのドラムさんがいる限り、ヒロに天罰という名の蹴りをお見舞いできないじゃないか。



藤「…悪い、起こしちゃった?」

増「うぅん。チャマさっきどうかしたの?大丈夫?」

直『ごめんごめん、ちょっとふろでころんじゃってさー。でもぜんぜんへいきだよ!』

升「おい、髪ちゃんと拭けよ」



秀ちゃんの言葉に目をやれば、チャマの後頭部から無数の水滴がぽたぽた垂れて、床を濡らしている。

しばらく見ていたが、手が短くて頭の後ろまで届かないらしく、じたばたしているだけだ。



直『うぇ…ふけないよぉ』

増「あーあ、よけい濡れちゃってるじゃん」

藤「ほら、こっち来い」



そう言って、あぐらをかいた俺のひざに座らせる。

わしゃわしゃと拭いているうちに、チャマの腹部から“きゅるる~”という音が聞こえてきた。



藤升増「「「………」」」

直『おなかへった…』



うつむいて恥ずかしげにそう言うチャマがあまりにも可愛くて、俺たちは耐えきれず笑い出した。

つられるようにチャマも笑顔になって、4人で訳もなく大爆笑になってしまう。



藤「おまえなぁ~…マジでほんっと、自由だな!」

増「しょーがないじゃん、まだ子供だもん!」

升「まーな、育ち盛りだもんな」

直『ごめん…///』







それから4人揃って、近所のモーニングをやっている喫茶店へ出向いた。

客の年齢層が高い店なので、とりあえず騒ぎにならなくてすむのが有り難い。


パンをかじるチャマの口元はジャムだらけだ。

苦笑気味に紙ナプキンを差し出すヒロ。


あーんと大きく開いた(つもりであろう小さな)口に、卵や野菜を放り込んでやる俺。

その傍らに置かれているのは、コーヒーではなく砂糖入りのホットミルクだ。



升「今日仕事午後からじゃん?今のうちに、チャマのこと電話しといた方がいいんじゃないか?」

藤「だな…とりあえず、風邪ひいたとでも言っとくか」

増「あとさ、子供用のもの色々買ってあげないと。着替えも1組しかないんでしょ?秀ちゃん、このまま買い物行かない?」

升「ああ」

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