第10話

藤「ヒロ、何か言ってた?」

直『なにかって?』

藤「だからホラ、どうしてそんな姿になったのかとか…」

直『あー、うん。ちゃんとぜんぶせつめいしたよ。ていうかアイツ、さいしょのうちね、おれのこと、おれのかくしごだとおもってたみたい(笑)』

藤「…隠し子…」



風呂から出て真っ先にすることは決まった。

リビングで眠りこけているであろうヒロを、問答無用で蹴っ飛ばすことだ。

でもその前にチャマをきれいにしてやらないとな。



藤「肌すべすべだなぁ…」

直『ねー!おれもびっくりした!ひふうすいし、いろしろいし、かみほっそいし!』



本人の言うとおり、普通のスポンジで擦ったりしたら傷が付きそうなほどに繊細な肌。

泡立てたボディソープを山盛りにして、素手で小さな全身を洗うことにした。



直『きゃははっ、くすぐったー…でもキモチイイ♪』

藤「………」



首筋や胸、お腹、腕も足もくまなく撫でる。



直『ふじくん、あたまもあらってぇ』

藤「…あぁ」



あまり力を込め過ぎるとすぐにチャマが痛がるので、なるべく優しく、柔らかめに…



直『ふじくんのゆび、すごくおおきくみえる…あ、これタコ?ギターひきすぎじゃない?』

藤「…別にいつも通りだろ」

直『ぅあー、めにはいったぁ』

藤「はいはい、シャワー出すぞ」



もうこの際はっきり言わせてもらおう。

何だこの逆風俗みたいな展開は!!

もはや第二の俺様が暴走寸前だぜ?



直『ありがとふじくん!おれそろそろでるね!』

藤「…はっ?あ、あぁ」



はっと短いドリームから醒める俺と、自力では扉を開けるのも一苦労なチャマ。


小さな背中を見ているうちに、ふとこのまま浴室に閉じ込めてやりたい衝動に駆られた。


抱きしめてキスして。

たとえ子供の身体でも、さっきみたいに優しく優しく撫でてやれば、もしかしたら…



―――いや、それはさすがにダメだろ。というか犯罪、たとえ捕まらなくてもチャマを泣かせてしまうのは間違いない。



入浴直前にチャマが見せた一瞬の怯えは、俺のこんな思考を予想したからに決まってる。

今のチャマにとって俺は、一番の保護者であると同時に、最も警戒しなければいけない相手のはずだ。


…大きく見えたのは、きっと指だけじゃないから。

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