第17話
弘はその時、若宮への想いを断ち切ろうと決めた。
かけがえのない友である由姫をここまで傷つけたのは、他でもない自分だから。
夜毎たずねてくる若宮を、表面上は幼馴染みとして…しかし内心に恋を押し隠して迎え入れていたのは、ずるい自分だから。
弘「ごめんなさい…藤…」
わずかに唇をふるわせた弘姫の決意は、その顔を見つめ続けていた升の君にだけ伝わった。
なぜなら若宮はその時、残酷なまでに由姫しか見ていなかったから。
藤「由姫、これだけは言っておく。たとえ神祇官家の後継者でなかったとしても、私が弘姫を愛することはない」
由『……うそ』
藤「とにかく座って。あなたや弘の名誉を傷つける噂が出回っているのは本当に心苦しく思っているが…」
由『世間の噂などどうでも良いのです!』
弘「そうよ藤、あなたは何もわかっていない!」
藤「えっ?」
とうとう由姫だけでなく弘姫にまで責められ、若宮はうろたえるばかりだ。
弘「世評ではないわ。こんなことになって、今後私たち4人の関係がどうなってしまうのか…泣いているのはそれを気に病んでのことよ!」
由『あぁ…弘っ…』
姫たちの悲嘆が、闇を切り裂いた。
それは誰のせいでもなく。
ただただ、人が人を好きになっただけなのに…
由の涙に、弘のかすれ声が重なった。
弘「もういや。…恋など、」
次に続く言葉の重さを予感して、升は思わず顔を背ける。
弘姫の口からそんな言葉は聞きたくなかったのに。
弘「恋などしなければ良かった…!!」
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