第16話
藤「違う、それは違う!」
由『…今は友情かも知れない。けれど、いつ若宮さまと弘が恋に落ちないとも限らないし』
弘「由、もうやめて!本当にごめんなさい…そんなつもりではなかったのよ」
弘姫も耐えきれず泣き始めた。
升は、何もできず傍観するだけの自分がはがゆく、下を向いてしまう。
と同時に、由姫が言った“若宮と弘姫が…”という部分を苦々しく反芻した。
その件については、由姫は何も知らないはずなのに。
女性の勘というのは恐ろしいものよ…
由『…真実はあなた方3人しか知らない。けれど、もうそれもどちらでも良いことでしょう』
藤「え?」
由姫のかたい口調に、その場の空気がサッと変わる。
由『このような恥知らずな行動をとった私は、もはや皇太子さまのお相手としては認めていただけないはずだから…』
藤「由姫、何を言っているのだ」
戸惑う若宮と視線を合わせないまま、彼女は静かに立ち上がった。
由『若宮さまを失うのはつらいです。けれど、弘と仲違いするのはもっとつらいのですわ』
弘「由!自分だけで勝手に話を進めないで!」
由『勝手なのはお互い様でしょう!』
飛び交う、きびしい声。
由『私は自分がいやです。幼馴染みの3人からも疎外され、あげくこのような醜い姿まで晒してしまって…』
藤「醜くなどない!全ては、私を想ってくれての行動ではないか!」
若宮も思わず声を荒げた。
由『ありがとうございます。せめてそう言ってくださっているうちに、私は身を引きたいのです』
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