第15話

慌ただしく扉を開ける升に、何ごとかと室内の2人も身構える。



升「由姫さまがお見えです」

弘「えっ、由が!?どうして突然…」

升「詳しいことはわかりません。とにかく若宮には、すぐどこかに隠れていただいて…」

由『その必要はありませんわ』



よほど急いだのだろう、もう由姫がその場に現れた。

若宮の着崩した装束は、その目にどう映っていることか…






由『…藤の若宮さまですね?初めまして。太政大臣・直井の長女で、由と申します』



このような状況で、若宮と由姫が初対面を果たすことになろうとは。升は唇を噛む。

さすがに慌てた様子の弘姫が口を開いた。



弘「あのね由、違うのよ。若宮さまは、本当にあなたのことだけ考えて…ここに来るのも、あなたとの交際を上手に運びたいと、その一心で…」

藤「そのとおり、私たちは話以外何もしていない。世間で言われているようなことは何もない、ただの誤解なんだ」



若宮も言葉を添える。

それが弁解がましく聞こえても、なお。



由『仮にそれを信じたとしても、あなた方がここで密会していたのは事実でしょう?この1ヶ月の間、ずっと』

藤「…それは」

由『私も同じ幼馴染みなのに、何故…。文や贈り物のために相談すると言うのなら、どうして私にも直接言ってくださらなかったのですか?』

弘「よ、由。落ち着いて」

由『弘も弘よ!ずっと私と友人として付き合っておきながら、どうして陰でコソコソと!』



由姫の大きな瞳から、涙がこぼれた。



由『誤解だなんて言うけれど…、これじゃあ若宮さまは、私より弘と親しいと思われても仕方ないじゃない。事実そうじゃないの!』

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