三:夜をこめて…

第11話

春に生まれた男の子は、帝の子でした。


夏に生まれた男の子は、武家の子でした。


秋に生まれた女の子は、貴族のお姫さまでした。


そして、冬に生まれたのは。


―――都のはずれの、下級貴族の家で。将来の出世も見込めない両親のもとで。


でもその子は3つになる年に、神様に仕える偉い人の家へ引き取られていきました。


「そなたは神に仕えるために生まれてきたのだ」と言われて、育ちました。




4人は共に遊び、学び、仕え、喧嘩をし、悪戯をして、成長していきました。


藤、升、由、弘。


互いの名に込められた、絆を呼んで。


それが大切なものであることも、無自覚のまま。


それが恋であるかどうかも、わからないまま。




―――それから十年あまり後。








夜が来た。

若宮を増川邸へ誘うかのごとく、京の市中にかがり火がゆらめき始める。

きっと今宵もおいでになるのだろう…そう考えて、弘はため息をついた。


幼馴染みだからこそ、そして恋愛が禁じられている身だからこそ、自分を特別な友人として扱ってくれる人。

決して打ち明けてはいけない、秘めた想い…


そこへ、機を見計らったかのように升の囁き声が響いた。



升「弘姫さま。若宮がお着きでございます」

弘「…はい」

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