第28話
最後に残った“地球人”である俺を処分しようという、そんな意見が大人たちの間で出たのは、当然のことだと思う。
むしろ、今まで生かしておいたのが不思議なくらいだ。
この星まで連れてきた理由は…まぁ、実験体として使うつもりだったのかな?
それでも、最終的には“地球の毒”を持てあまして、処分を決めたってわけか。
俺が追っていた幻。
演じ続けていた3人の影とは、結局何だったのか。
俺の心のわずかな慰めとして以外に、意味なんかなかったのに。
3人の死と引き替えに生き残ったような状態の俺。
もっと頑張らなきゃいけないはずなのに。
…1人での無力さを痛感する。
いや、2人でも同じことか。
たとえチャマが生きていたとしても、男同士じゃアダムとイヴにもなれやしない。
ヒロや秀ちゃんがいたとしても、兄弟じゃないから、愛憎の果てにアベルを殺したカインにすらなれない。
滅びゆく地球で、かの聖職者の死を看取った時、俺は初めて「神」呼ばわりされる自分を肯定した。
あのシーンを思い出すときだけしか泣けなくなった俺にとって、それはまさに信仰にも等しい、絶対的にすがれる光…
そんな記憶に顔を歪めた俺に向かって、不意に、子供がこう言った。
泣き笑いのような表情で。
「4人分の名前でフジクンを呼ぶのは、意味があることだったんだね」
「他の3つの名前は、フジクンにとってすごく大事だったんだね」
何だよ、ガキども。
さっき俺、おまえらの大事なライトを壊しただろ?
早く俺を見捨てて、あっち行け。
大人たちの所へ戻れ。
そうテレパシーで送っても、子供たちは俺を囲んで動かない。
涙が止まらない。
俺は、生きている。
1人ぼっちだろうとそうじゃなかろうと、確かにここに。
…今わかった。
感情が死んでいる方が楽だというのは、嘘だった。
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