第27話

――――――――――

―――――――

――――




「フジクン、しばらくここに隠れてて」




かなりの時間が経過して、走り疲れた俺と子供たちは、街外れの古ぼけた家に入った。


ほこりの積もった床に座り込む。

閉じこもったのは、窓がない真っ暗な部屋。



「フジクン、大丈夫?」



…この半年ほどの間、俺が“フジクン”と呼ばれるのは日曜日だけだった。

7日に一度きり。



でも、それで充分だった。

だって他の6日間は、誰かしら“仲間”と一緒だったから。



…そんな気分になれたから。

1人でいる時よりも楽しそうに、よく笑って、よく喋って、よく食べて…



べつに難しいことじゃなかった。

あいつらの顔を思い出せば、自然とそうなった。



―――でももう、それも終わりだ。









隠れてからいくらもたたないうちに、家の前に大人が集まってきた。

たくさんのライトが、窓のないこの部屋を照らしてくる。


10人の子供たちが、俺を庇うように、前をふさいでくれるけど。




―――こりゃダメだ。多勢に無勢もいいとこだな。




そう悟った俺は、子供の1人が持っていたライトをわざと壊した。


子供たちに俺を憎ませるために。

この子たちを、危ない目にあわせる前に。




ドアの隙間からこっそり見てみたら、大人たちの先頭にいたのは、あの年長の子供だった。

最初に鍵をあけて、俺を逃がしてくれた子。


…きっと大人たちに散々責められたのだろう、顔に涙と抵抗の跡がうかがえる。






そこに、大人たちからのテレパシーが送られてきた。

“投降しなさい”だってさ…笑える。


まさか自分が、そんな銀行強盗みたいなことを言われるとはね。

夢にも思わなかったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る