第25話

3番目に倒れた秀ちゃんも徐々に弱っていき、あの日本の刑務所に移される直前、ついに起き上がれなくなった。



死ぬ間際まで俺を気遣っていたヒロとチャマ。

秀ちゃんもまた、病床で俺の心配ばかりしていた。



俺自身は自分のことで手一杯なのに、どうしてあいつらはそうだったんだろう。

俺はついに人類最後の1人になってしまった。



…過去形で話すのは、もういやだ。

独り言は、もうたくさんだ。

助けてくれ。

俺を1人にしないでくれ。





「みんなに会いたい…」





たった1枚だけ手元に残った写真には、子供のように明るい笑顔の4人が写っている。

俺が何よりも、もしかしたら楽器よりも、この星まで持ってくることを望んだもの。



写真なんかなくても、自分の心の記憶を辿ればいいだろうって?

そんなのは、救いのある人間の言うことだ。

こんな写真1枚にすがりついて、1人4役を演じてまで、自我の崩壊を食い止めた俺。



笑えばいい。

いくらでも笑えばいい。

けど泣くな。

俺を見て泣くなよ、子供たち。




「だって、チャマが泣いてるから」




泣いてねぇよ…

笑え。笑え!

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