第24話

…死んだ仲間の名前で、俺を呼ぶ子供たち。


嬉しさと淋しさが混ざって、思わず泣きそうになる。

呼吸が苦しいのは、走っているからだけじゃない。






逃げながら、俺は子供たちに心の底から謝った。


今までずっと、無理やり4人分の名前で呼ばせていてごめん、って。

俺はそうやって俺の心を保たせていたんだ、って。


たとえ生きているのが俺1人だけでも、4人分の名前で呼んでもらうことで、あいつらも一緒のような気がして。






「フジクン!」

「チャマ!」

「ヒロ!」

「ヒデチャン!」






俺を助けようと、刹那的にでも逃がそうとしてくれる子供たち。


口々に“俺”の名前を呼ぶ。

テレパシーでも、きちんと伝わってくる。


…まるで、4人で一緒に逃げてるみたいだ。

自分の命が危ないというのに、俺はその事実が心底嬉しくて。









…最初に力尽きたのは、ヒロだった。

あれは、俺たちが例の聖職者を看取った直後のことだ。


未知の病原菌は、ヒロの細い体をあっという間に蝕み、静かに息を引き取らせた。

葬式で声もなく涙を落としていた秀ちゃんも、もういない。





次にチャマが逝った。

時期的には、方舟に入った前後のこと。


詳しいことは…正直よく覚えていない。

俺はあの時、半分死んでしまったんだと思う。

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