第18話

月を亡くした王様は、その後どう生きたのだろうか。

…幸せだったのだろうか。

その夜、こんな夢を見た。




真っ暗闇の中、誰かがしゃがみ込んで泣いている。

小柄な…まだ子供みたいな感じ。

髪が長めだから、女の子だろうか。


目に当てた両手が外され、ゆっくりこちらを見上げた顔は―――


俺?









翌朝、子供たちの激しいテレパシーで起こされた。


少しはテレパス的な日常に慣れてきたとはいえ、乱発されると困る。

複数の言葉と意識で脳内がいっぱいになって、聖徳太子もびっくりの大混乱に陥るのだ。


しかも、子供たちの伝えてきたことは、寝起きの俺の理解をかるく超えていた。

それは、彼らの故郷の星でのこと。




―――地球から持ち帰った植物の一部がその星に合わず、枯れながらおかしな毒素をまき散らしているらしい。









「大人がみんなで集まってする会議があったんだ」

「そこで、地球から引き上げることが決まったって」

「ヒデチャンも一緒に」



地球から異星人の星へ移動する。

あの方舟で。


…それが現実のものとなれば、海外旅行なんてレベルじゃない。


おそらく俺は最初で最後の「他の星で暮らしたことのある地球人」となるだろう。

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