ふたご座のオリオン~side升~

第13話

懐かしい声がする。




―――俺さ、ドラムって、基本的に秀ちゃんのしか知らないんだ。

―――プロになってから、少しは他のドラマーとも演奏させてもらったけど。




長い前髪がゆれる。




―――でもやっぱり、中学生の頃からずーっと、圧倒的に秀ちゃんのドラムで唄ってきた回数が多いからさ。

―――高校の時に先輩とバンド組んだときも、ドラムは秀ちゃんに頼んでたじゃん。




いつだったか、あれはメジャーデビューして2~3年たった頃か。2人でした会話。




―――まぁ…ドラマーって数が少ないからな。でもオマエ、そんなこと考えてたんだ?

―――だったら俺なんか、おまえ以外のボーカルを知らないぞ。




そしてお互い、ちょっと意外そうに笑いあう。

何を当たり前のこと言ってるんだって思う自分も、どこかにいるのに。




―――これからも、よろしくな。











それは、すごく幸せな記憶だった。


あの頃の俺たちに教えてやりたい。

おまえらのバンドは成功するって。


お互いのボーカルで、ドラムで、ずっとやっていけるんだって。

死ぬまで一緒にいられるんだってこと。




シヌマデ、イッショニ。

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