第12話
しばらくたって、日が傾いていることに気づいた。
小さな窓から、ねぐらに帰る数羽のカラスが見える。
「きみたちは、神様だ」と言われたのも、こんな夕焼けのなかでだった。
あの聖職者の彼のことを思い出す時だけ、俺は涙をこぼす。
自分の現状に対しては、そんなことはない。
きっと感情が死んでいるんだろう。
その方が楽だ。この状況なら、その方が良い。
「チャマはベースが地球で一番うまいんだねっ」
夕陽を浴びながら小首をかしげる子供に、俺は微笑んでこう返す。
「そうでもないよ。俺よりうまく弾ける人は、この星にすごくいっぱいいた。でもね、俺は、その中の誰よりも、ベースが好きだったと思う。その気持ちだけは誰にも負けない」
言葉にしてしまえばなんて陳腐な、チャマという人間の本心。
チャマと呼ばれる人間を愛してくれた人たち全てへの、心からのメッセージ。
たとえもう、死者にしか届かないのだとしても。
「チャマぁ、もっと弾いて~」
幼い無邪気さは、時に郷愁と孤独を感じさせることもあるけれど。
おおむね、俺を優しくさせる。
形だけでも、俺の表情をやわらげる。
この子たちの気持ちを沈ませてはならない。
子供を傷つけてはいけない。
だから泣くな、俺。
笑え!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます