第8話
「ヒロ?」
…檻ごしに俺にじゃれつくこの子は、男の子なのかな。
なんとなく聞きそびれてる。
ていうか、彼らには性別ってあるんだろうか。
よし、聞いてみよう。
子供と心を通じやすくするために、俺は壁のギターを手に取った。
…腕が痛くなるほどアルペジオを奏でた末に聞き出せたことは、彼ら“異星人”は、地球の感覚でいう両性具有であるという事実だった。
哺乳類とも爬虫類とも違い、繁殖も一人で行えると言う。
同性愛とも観念が違うし、もしかしたらアメーバの“分裂”あたりが一番近い感覚だったりして…
いや、ほぼ人間と同じサイズの生物がそんな繁殖の仕方をしているところを想像すると、かなり怖いけどさ。
地球じゃあ、そんなことするのは微生物だけだよ。
そう伝えると、子供は目を輝かせて「地球ではそうなの?」と問うてくる。
うん、地球上ならどこの国の人でもそうだよ。
日本でも、アメリカでも、ロシアでも。
「ニホンて何?」と食いつく子供に、地球がかつてたくさんの国に分かれて共存していたことを話す。
…かつて、ほんの半年前まで。
人類が、傲慢なほどの幸せを享受していたということを。
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