頼むから、人間にならせてくれないか〜リンクと花の物語〜

服部優香

第1話 君への想い



「リンク~~!早く歩いて~~!!私、仕事に遅れちゃうよ~~」峰岸理香が叫んだ。


理香は25歳。IT企業関連会社の事務をしている。勤め始めてから約3年が経っていて、仕事はほとんど完璧にこなせるようになっていた。もともと、覚えが早いとは言われていたが、それは本当で、仕事を始めてから約二か月ほどで、ほとんどの内容を覚えていたくらいだった。


彼女の愛犬、リンクは生後四か月になるシーズー犬。色は白とシルバーと茶色。その三色がいい具合に混ざり、リンクの外見レベルをアップさせていた。ペットショップにいたころはお客さんから、かわいいかわいい、と評判が高く、抱っこされる機会も多かった。


リンクと理香が出会ったのは、とあるショッピングモールの中にある新しくできたペットショップ。そこでは様々な種類の犬や猫が売られていた。決して大きくはなかったが、かわいい動物が多いということで、見に来るお客さんは日に日に増えていた。


理香は週末の休みを利用して、何度かそこへ足を運んでいた。彼女は犬が大好きで、ずっと前から飼いたいと思っていた。実家でも犬を飼っていたので、自分も欲しいと思っていたからだった。


もうすぐ春がやってくる・・・段々と暖かくなってきた3月の半ばのある日、その日も理香はペットショップに来ていた。彼女はなんでも直感で決めるタイプ。飼うなら、ビビッと来た犬を飼おうと心に決めていた。


「新しい子、いるかなぁ?」理香は一匹、一匹を見て回った。


「う~ん。今日も飼いたい子、いないかも」そう思ったその時、理香はリンクに出会った。そう、それは運命的な出会いで・・・。

その瞬間、理香は「この子だ!絶対そう」と思い、1分もしないうちに買うことに決めた。


なぜ、理香がビビッと来たかって?それは理香にしか分からない。彼女なりに何か惹かれるものがあったのだろう。


「君、うちに来てくれるよね?わたしと一緒に楽しく過ごしていこう?」理香は心の中でリンクにテレパシーを送った。


それがリンクに伝わったのか、リンクの方も「ありがとう。俺で良ければ」と理香にテレパシーを送った。


理香はリンクを家に連れて帰り、家の中に放した。リンクは外に出られた嬉しさで、一気にテンションが上がっていた。「やった!外に出られた!ペットショップから出られたんだ!」心の中で、そう叫んだ。


「君の名前は、リンクね!これから、一緒に生きて行こうね!よろしくね!」理香もリンクを連れて帰ってこれて、カナリテンションが上がっていた。


その次の日から理香は毎朝仕事の前に、リンクの散歩をし出した。


「リンク、散歩好きになるといいなぁ。たまにいるんだよね。散歩が嫌いな子……」


「もし、嫌いならあんまり無理して連れ出さないことにしよう」

そう、理香は心が優しかった。なので、リンクが嫌がるときは、無理して連れ出さないことにした。

「リンク、今日はどう?行きたい?行きたくない?」毎朝、そんな風にリンクに問いかけていた。


リンク自身はあまり、散歩は好きではなかったが、理香の方が散歩を楽しみにしていたことと、理香と一緒にいられるのが嬉しかったので「大丈夫だよ!行くよ!」と叫んでいたのだった。


それからしばらくの間、リンクと理香は2人きりの散歩を楽しんだ。リンクは理香に出会えて本当に良かった、と思っていた。そして、その時のリンクは、この幸せはずっと続く、とそう信じていた。しかしそんな時……。 

  

彼、岩渕博也が現れた。


身長165cmほど。決して大柄ではなかったが、切れ長の目のあっさりとした醤油顔だった。他から見たら、「イケメン」と呼ばれる部類の男だ。 


理香と博也は数週間前に出会ってから、毎朝の散歩のときに会話をするようになっていた。博也も新しく飼い始めた「花」を連れて、散歩を始めていたのだ。

花もリンクと同じシーズー犬。色は白と黒だった。生まれたのもちょうどリンクと同じころ。そう、四か月ほど前だった。



理香と博也は同じシーズー犬を飼っていたということもあってか、すぐに意気投合して、毎朝の散歩の時間に話せるのを楽しみにするようになった。


理香「わ~~。花ちゃん、また美人になったんじゃない~?」

博也「うん、最近、もっと美人度が増してきたよ!リンク君も、男前になってきたね」


リンクはそれをよく思わなかった。


なぜならリンクは……。


理香に恋心を抱いていたからだ。


だから、二人が話しているのを聞くのが、辛くて仕方なかった。


「俺の方が……。俺の方が、理香と先に出会ったのに、一緒にいる時間だって長いのに……。なんでコイツ、こんなに理香を楽しませられるんだろう」

それと同時に思った。


「理香を幸せにできるのは、俺じゃあなく、この男なんだろうな……」ってね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

頼むから、人間にならせてくれないか〜リンクと花の物語〜 服部優香 @kixichan12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ