=shower=

第24話

前を行くタクシーの中で、直井が藤原に何やら笑顔で話しかけているのが見えた。






升「着信拒否されてたの、フランス行ってる間だけで良かったよ」

増「…うん」

升「本気で焦った。嫌われたんだと思ってさ」



升の声に、茶化すような雰囲気は微塵もない。



増「ていうか秀ちゃんさぁ、俺んち来たでしょ?留守の間に」

升「…やっぱわかった?」

増「スルーしようかと思ったんだけどね。なんかちょっとこう、匂いが…」

升「でも俺、香水とか何も付けてないぞ?」



そういう意味じゃないよ、と増川は笑う。



増「なんとな~くだけどね、秀ちゃんの感じがした」

升「そっか。……なぁ、もう急にいなくなったりしないでくれよ」

増「…着信拒否したのは、好きだからだよ」



もつれる会話。



増「解除したのも、好きだからだけどね」

升「なんか……おまえに好きだって言われるのは、悪くないな」



からみ合った糸を、ゆっくり解くかのように。



増「…名前を付けて保存、か」

升「え?何の話だよ」



幸せに向けて。



増「ねぇ、秀ちゃん、今度一緒にバドミントンやらない?」

升「あー。まさかの升と増川の共作曲が出来るかもしれないな(笑)」

増「間違いなく名曲になるよ!」



これから先の話を。



升「どうせなら、フランスでするか?」

増「あっ、それいい!やりたい!」






もう、雨の中で独りになることがないように。

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