第23話

直『ひねくれ者ぉ!そーんなニヤニヤしてるくせに、何が“嬉しくない”だよ!』

藤「そんなこと思ってねぇもん」

直『うっそだぁ!ほら、笑ってんじゃん!』

藤「ぅるせーな、もう」

直『そんな心配しなくて大丈夫だって。俺が藤くんのこと嫌いになるはずないでしょ?』



そう言ってやったら、今度こそ藤くんは隠しきれない笑みをこぼした。



藤「あっ、思い出した!もう一つ言ってやりたいことがあったんだ!」

直『ん?』

藤「おまえ、あんなカーペットごときで俺を拒否したつもりだったのか?」

直『あ、あー…あーれは、ねぇ…』



ちょっとしたことで肌が荒れてしまいやすい藤くんのために、自宅にカーペットや絨毯を敷かないことにしていた俺。

(まぁそのわりに、本人の家には敷いてあったりするんだけど…)



直『…こないだ偶然見つけたんだよ。ダニとかカビとかの影響を受けにくい、アレルギーがある人にでも大丈夫なカーペット…』

藤「…じゃ、あれは…」



拒否ったわけじゃない。むしろ。



藤「…わかった。俺おまえんち行くわ」

直『えっ?何、いつ?』

藤「今」

直『今!?』



―――とか何とか言ってるうちに、2台のタクシーは事務所に着いた。



藤「くっそー、お預けか」

直『いやあの…とりあえず俺は、迷惑かけてすいませんでしたって、言いに行かないと』

藤「そんなの、とっくにヒロから聞かされてるよ。プロデューサーも他のみんなも、単に無事なおまえが見たいだけじゃね?」



…それならなおのこと、会わなきゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る