第6話

直『で、男は過去の恋愛全部を、後生大事に抱えまくり?そら浮気もするわなぁ』

増「ま、男が浮気しやすいってのは、突き詰めて言うと、遺伝子を残す可能性を広げようとしてるだけだけどね」

直『そっかー。そう考えると、思わず浮気肯定派にまわりたくなる(笑)』



そんでもって、1つ1つの思い出を全部、律儀に“名前を付けて保存”しちゃうかもね。



増「そういうやつに限って、自分の恋人が浮気したらマジギレすんだよ(笑)」

直『ちげーねー!』



何て言うか、普通に楽しい。ヒロと2人で旅行なんて、これが初めてなのに。



直『なぁ』

増「んー?」

直『おまえ、どうして来る気になったの?』

増「んー…」

直『フランスって知った途端、妙にその気になってたじゃん。何かあるの?』



そう聞くと、困ったように首をかしげた。

背が高いくせにそういう仕草が似合うのは、反則じゃないだろうか。



増「べつに、明確な目的があったわけじゃないよ。ただ…見てみたかっただけ」

直『秀ちゃんが興味を持ってた場所を?』



俺の言葉を予想していたように、もう一度首をかしげる。そして、また困ったように笑った。



増「望みのない恋には、どこかで見切りを付けないと。一生をその相手に捧げ続けることになっちゃうよ」

直『……わかるけど』

増「……………」

直『見切りって、どうしたら付けられんの?』



俺は、そんな術は持ってない。

おそらくヒロも。






ベルサイユを湿った空気が覆いだした。

一雨来そうだ。

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