遣らずの雨

第5話

ベルサイユ宮殿とやらは、話に聞いていた以上に広かった。


土地、建物、装飾品、すべてが遺品。

太陽王と称した、絶対王政の象徴の。そして、最後の女王として君臨し、断頭台で処刑された王妃の。






あれから俺たちは、本当にエールフランスのお世話になってしまった。

直行便で十数時間座りっぱなしだったけど、映画やゲームがあったから退屈はしなかった。


ただ、どこにも連絡しないで来たから、日本じゃ騒ぎになってると思う。


…ロンドンまで問い合わせが行ってたら、さすがにヤバイとは思うけど。

まだ昨日の今日だし、そこまでは行ってないだろう。と信じたい。






広大な宮殿の隅っこで、栗を拾った。

クリボーみたいな典型的な形の栗じゃない、もっと丸っこくて原始的な感じの。


…まるで、俺みたいないびつさだ。

そう思った途端、タイミングを見計らったかのように連れが声をかけてくる。



増「ねぇ知ってる?恋愛の終わらせ方は、男女で違うっていう話」

直『終わらせ方?』

増「うん。まぁ正確には、終了後の自分の中での整理方法だけど」

直『はぁ』

増「女性はパソコンで言うところの“上書き保存”なのに対して、男は“名前を付けて保存”なんだってさ」

直『…何それ』



テレビで心理学の先生が言ってたんだよ、と、ヒロは大真面目な顔をしてる。



直『女は割り切るのが早いってこと?あんまり引きずらない、みたいな?』

増「そんな感じ。っていうか、そうじゃないと子供なんて産んでられないってことじゃない?」



ははぁ、なるほど。女が強いと言われるのは、あながち無根拠な話でもないってことか。

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