第2話

ロンドンでレコーディングという話が持ち上がったのは、2ヶ月ほど前のことだ。

プロデューサーの知り合いが現地にいるとかで、最初はほんとに軽い感じで。


“海外レコーディング”。

べつにプロならやってもおかしくはない、いやむしろ1回くらい経験してみたいもんだと思ったこともあったけど。




でも実際そういう話になってみたら、なんか不思議だった。違和感、不自然さが拭いきれない。


繰り返すけど、“俺たちのバンド”と、“海外レコーディング”。ミスマッチこのうえない組み合わせだとは思わないかい?


水と油っていう例えもしっくり来ないなぁ…、何て言うんだろう、混ぜちゃいけない洗剤みたいな感じ?

俺たちはずっと4人だけで、馴染みのスタッフと一緒に、引きこもりみたいに音楽をやり続けて来たわけだからさ。






それで、さんざん話し合った末、とりあえず藤くんだけが行ってみることになった。


バンドの中心はボーカルであり、その中心が「是」と認めれば、大体は上手くいく。よそのことは知らないけど、うちのやり方はいつもそんな感じ。




―――3日前、藤くんは少数のスタッフとともに旅立った。




べつにどうってことはない、1ヶ月ちょいで帰ってくる。

その間、残りの3人は、出来る範囲でレコーディングを進める。自主練に励む。あと、ほんの少し休みもあるかな。




俺が今、3日前と同じ空港にいるのは、だから気まぐれによる偶然なんだ。

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