第13話

俺は、サクラを中心とした仲間たちの輪から、少しずつ後ずさっていった。


急な展開についていけなかった。

そして同時に、どす黒いものが胸の奥にこみ上げてくる…。


どうして?

ミュージシャンだなんて、あんた、そんなこと一言も言ってなかったじゃん。


どうして1年前、俺の前に現れた?

どうして、あのコンテストの話を持ちかけた?

どうして…

まさか…



藤「俺に対する評価って、何だったんだよ」

桜「え?」

藤「もしかしてあのコンテスト、出来レースだったのか?多少使えそうな素人を引っ張ってきて、入賞させて…」

桜「フジ、違う」



あわてたような、大人の声色。

俺の知ってるサクラの声とは違う気がして、さらに噛みつく。止められない。



藤「あん時にもらった一万円、俺がどんだけ嬉しかったか、あんたわかってんのかよ!メンバー以外で俺のことわかってくれる人がいた、そう思ってすげぇ嬉しかったのに!なのに、実はプロに目ぇかけてもらって、とんとん拍子にレールに乗って…それで、それで結局は俺たちのこと、商売道具にするんじゃねーか!」



升「藤原!」



必死で言い募る俺を制止したのは、秀ちゃんの真剣な瞳だった。

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