第12話

と、その時、スタジオの奥からさらにワラワラと人が出てきた。


―――さくらい!


そう呼びかける声が聞こえてくる。

さくらい?…桜井?


いつか感じたのと同じ、自分の目が冷えてゆく感覚が恐ろしい。

目の前の男は、初対面の時と全然変わらない様子で、目を細めて笑った。



「俺は桜井。桜井和寿」



細い目と、少し高めの声。

さっきのサクラの言葉がよみがえる。

“…俺も色々あったんだよ…”



「あいつら、うちのバンドのメンバー。この1年で、やっと俺らも軌道に乗ってきたとこなんだ。そうだ、これ俺らが出さしてもらったCD!よろしくね~」






そこに、チャマとヒロが興奮しきった面持ちで割り込んできた。



直「あのっ…このCDって、あの!こないだラジオで聞きました、曲!」

桜「あ~ほんとに?いや俺らもさぁ、やっと少しは流してもらえるようになってきたから…テレビとかそのうち出られんのかなぁ?わかんないけど」



その特徴的な声色が、いっそ脳天気にさえ聞こえてくる。



増「あの、その、インディーズなんですか?」

桜「いや違うよ、ここの上の事務所と契約してて…まぁその、プロってやつ?」

直「うわぁやっぱり!すげーすげー、本物だ!サインください!」

桜「あはは、ありがとねぇ」

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