第9話

そして、コンテストが始まった。


俺たちが演奏したのは『ガラスのブルース』。

俺が初めて日本語で作った曲だ。


緊張はもちろんあったし、少しミスったりもしたが、俺たちなりに納得の演奏をすることが出来たと思う。






結果、俺たちは3位入賞だった。

1位から3位までの差はほとんどなかったと審査員長は言っていたが、結果は結果だ。


それでも、審査をしていた有名事務所の関係者やスタジオミュージシャンと知り合うことも出来たし、俺たちに対する評価…ほめ言葉や苦言、直すべき箇所の指摘なんかもはっきり聞けて、すごく良い勉強になったと思う。


優勝、CDデビューという夢は、叶わなかった。

でも、俺たちはまだまだこれからだ。


そう言い合って、4人で笑い合うことが出来る“今”こそが、友人としてもバンド仲間としても、俺たちにとってかけがえのない時間なんだろう。






そうして、帰路についた夕暮れ時。

俺は少しだけ後ろを振り返った。


サクラの姿は、ついぞ見かけなかった。

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