再会

第10話

それから1年ちょっとたった頃、俺たちはインディーズレーベルからCDを出せることになった。


あのコンテストをきっかけにいくつかの人脈が出来て、そこから少しずつ音楽を聞いてもらえる機会も増えていって…


ライブハウスに来てくれる大人たちがいた。

名刺をもらって、連絡先を教えて。

それから、俺たちの夢が本当に始まったのだ。






初めて呼ばれて行ったプロ用のスタジオは、それまで使っていた安いところとは段違いの、立派な設備を備えた場所だった。



藤「すっげぇ」

直「うあ~…何?ここ、俺ら使っていいわけ?」

増「なんかドラムとかも高そうだね」

升「配置かえていいのかな…そりゃいいんだよな?俺が使うんだし」



完全に気後れして、すみっこに固まってヒソヒソ話す4人の田舎者のガキを、周囲の関係者が無遠慮に見つめる。

まるで品定めでもされているかのようだ。


大丈夫なのか、俺たち。

ほんとにこんな場違いなほど立派なとこでやっていけるのか?…ちょっと不安になる…



そこへ、どこかで聞いたような声が降りかかった。



「おー、フジ!久しぶり!」



何だぁ?いやに親しげに呼ぶやつだな。

こんなとこに知り合いなんかいるはずないのに。



「あれ?俺、忘れられちゃったか」



え…?

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