第7話
翌週、俺はサクラに言った。
コンテストに参加することにしたから、しばらく路上で歌うのはやめて、バンドの練習に専念する、と。
やつは目を糸のように細めて笑い、選曲やらデモの録音方法やらメンバーのPR方法やら、根掘り葉掘り聞いてきた。
…きっかけをくれた人とは言え、正直、こんな色々詳しいことを聞かれるとは思わなかった。
音楽関係者なのは間違いないんだろうなぁ…??
その日の去り際に「じゃあ、コンテストで会おうな」と言われたから、まぁ、何かしらの関係はあるんだろうね。
いいやもう、どっちにしろデモで勝ち抜けば正体つかめんだろ。
それから俺たち4人は、デモテープ作りに練習にと、急に結束力を強めていった。
(別にそれまで弱かったわけでもないんだけど)
直「ねぇねぇ、ここ、この4小節目と8小節目さぁ、ちょっと変えてもいいかな」
升「変える?って言うと…」
直「こう(~~~♪♪)」
升「えー…と。ん?じゃあ、ハットはこのままでいいのか。ちょっともっかい弾いてみて」
リズム隊の周りに譜面が散らばる。
その傍には、地べたに座り込んで黙々とコードの確認をしているヒロがいる。
みんなでスタジオにこもる時間が、日に日に長くなっていく。
藤「…なぁ、一回合わせてみない?」
増「うん」
直「おっけー」
升「アタマから行くか?」
今までだって、演奏は揃ってたはずだ。
でもコンテストという目標が出来てから、さらに息が合うようになってきた気がする。
夢や希望という単語を使うのはこっ恥ずかしいけど、俺はもう、ボロアパートで1人で過ごす夜も、不安に感じなくなっていた。
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